帰る日の朝に、もう1時間を。和心村が「十一時倶楽部」を提唱、房総の標準チェックアウト11時以降の宿69軒を公開

保護猫たちが暮らす、泊まれる里山の小さな村「和心村」(千葉県富津市)が、「十一時倶楽部(The Eleven O’Clock Club)」を提唱しました。合言葉は「朝を旅人に返す」です。日本では10時チェックアウトの宿が多く見られます。そのなかで、標準のチェックアウトを11時以降にして、朝食や帰り支度を急がずに過ごせる朝を宿のおもてなしとして広げようという呼びかけです。なお、宿力が公開した「全国139施設のチェックイン・チェックアウト時間」調査では、対象139施設のうち93施設(約67%)が10時チェックアウトでした。

チェックアウトが1時間遅いと、帰る日の朝はどう変わる?
10時チェックアウトと比べると、11時なら客室を使える時間が1時間増えます。その1時間は、もう少し眠るために使っても、朝食のあとに休むために使ってもかまいません。荷造りや身支度にゆとりを持たせることもできます。朝食を終えてすぐ帰り支度に取りかかるのではなく、部屋でコーヒーを飲んだり、庭を眺めたりする。和心村は、出発までの時間の使い方を自分で選べることに、11時チェックアウトのよさがあると考えています。
十一時倶楽部の参加・掲載基準
- 標準チェックアウトが11時以降であること
- その時刻を公式サイトまたは予約サイトで確認できること
- 有料のレイトチェックアウトや、特定の宿泊プランだけに適用される延長特典は基準に含めない
この基準で重視しているのは、追加の延長手続きをしなくても、11時以降まで客室で過ごせることです。観光庁の「モデル宿泊約款」第9条も、客室の使用時間を全国一律で10時とは定めていません。時刻欄は空欄で、各施設が設定する形式です。清掃や次の宿泊者の受け入れに必要な時間を踏まえつつ、旅人が朝をゆっくり過ごせる時間をどう確保するか。和心村は、その選択を宿のおもてなしとして考えるとしています。

時間のゆとり、睡眠、運転。背景にある研究
和心村はこの考え方を伝えるため、時間と幸福感、睡眠、休暇に関する研究を一つの記事にまとめて公開しました。房総の宿泊施設のチェックアウト時刻を独自に調べた結果も、同じ記事に収めています。紹介されている研究のひとつが、2017年に米科学誌PNASに掲載されたWhillansらの研究です。この研究では、働く成人60人が、2週にわたって各40ドルを「時間を節約する買い物」と「物を買うこと」に使いました。ポジティブな感情の平均値(高いほど強い)は、時間を節約した日が4.00、物を買った日が3.71でした。時間に追われる感覚の平均値(低いほど弱い)は、それぞれ3.49と4.22でした。ただしこれらの研究は、時間や睡眠、休暇の価値を考えるための参考資料です。チェックアウト時刻による幸福度の違いを実証したものではないと、和心村は明記しています。
睡眠についても資料が挙げられています。厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」では、20歳以上で1日の平均睡眠時間が6時間未満の人は、男性38.5%、女性43.6%でした。慣れない環境での最初の夜に眠りにくくなる「第一夜効果」や、起きた直後のぼんやりした状態を扱う「睡眠慣性」の研究にも触れています。子ども連れの家族や、台湾・香港など日本と時差のある地域から訪れる人もいます。生活リズムや朝の支度は、旅人によって異なります。そうした違いに配慮し、朝の過ごし方を自分で選べる時間を残したいという考えです。
車で帰る旅人の朝についても、研究が示されています。米国で事故に関与した運転者6,845人を分析した研究があります。直前24時間の睡眠が7〜9時間だった人と比べると、6時間・5時間・4時間だった人が事故の責任ありと判定されるオッズは、それぞれ1.3倍、1.9倍、2.9倍でした。日本自動車研究所も、2019年の交通事故統計を分析しています。その報告では、居眠り運転による死亡・重傷事故の約6割が、観光・娯楽、買い物、送迎、帰省などを含む私用の運転中に起きていました。起きて、食べて、ひと息ついてから出発できるようにすることも、朝の時間を考える理由の一つに挙げられています。

房総で標準チェックアウト11時以降の宿、69軒を一覧に
和心村は2026年10月18日、房総周辺の宿泊施設のチェックアウト時刻を、ネット上の公開情報から調べました。確認した施設ページは、楽天トラベル1,067件、じゃらん589件、Yahoo!トラベル551件の延べ2,207件です。この件数には、同じ施設の複数サイトへの掲載や、掲載対象地域外の施設も含まれます。楽天トラベルの対象4地域・1,067軒では、802軒の標準チェックアウトが10時、829軒が11時より前でした。この数字は今回の対象ページを集計したもので、日本全国や海外の施設の割合を示すものではありません。
統合後、11時以降の候補として確認できたのは282軒でした。そこから施設の形態と規模に関する調査上の基準で絞り込んでいます。旅館・ホテル55軒から成人専用レジャーホテル5軒を除いた50軒と、グランピング・ヴィラなど総部屋数4室以上の宿19軒を合わせた計69軒が掲載されています。エリアごとの掲載数は次のとおりです。
- 館山・南房総:15軒
- 鴨川:9軒
- 勝浦・御宿・いすみ:12軒
- 内房(鋸南・富津・君津・木更津):13軒
- 養老渓谷・大多喜・市原:6軒
- 九十九里・茂原・東金:11軒
- 銚子・旭:3軒
69軒の標準チェックアウトは、11時が61軒、12時が6軒、13時と14時がそれぞれ1軒です。一覧は房総の全宿泊施設を網羅したものではなく、千葉市、成田、香取は対象外です。3室以下の一棟貸しや民泊、部屋数を確認できないグランピング・ヴィラなども掲載されていません。また69軒は、施設側の加盟申込を集計した数ではなく、公開情報を調べて掲載した施設数です。時刻は調査日に確認した情報のため、予約時には希望する宿泊プランに表示される最新の条件を確認するよう案内されています。

猫のそばで過ごす朝を、帰る日にも
和心村は、保護猫たちが暮らす里山でゆっくり過ごす滞在を、湯治になぞらえて「猫治」と呼んでいます。和心村の標準チェックアウトは11時です。猫のそばに座り、それぞれのペースで過ごす。庭や森を眺めながらコーヒーを飲む。帰る日の朝にもこの場所で過ごす時間を残したいという思いが、今回の呼びかけにつながりました。和心村は「泊まることが、守ることになる。」という言葉を掲げています。宿泊客が和心村で楽しい時間を過ごすことが、そのまま動物たちの暮らしを守る力になり、日本の里山の風景を未来へつなぐ力にもなるとしています。
十一時倶楽部への参加・掲載を希望する宿泊施設は、「十一時倶楽部」と施設名を添えて和心村へ連絡すると、標準チェックアウト時刻の記載を確認したうえでリストに追加されます。詳しい内容は、記事「十一時倶楽部:朝を旅人に返す——房総半島で11時以降にチェックアウトできる宿69軒から始める、全ページ実査」にまとめられています。掲載先はIDAEO知識庫で、日本語・英語・繁体字中国語・簡体字中国語で公開されています。和心村の運営会社は株式会社和心村、IDAEO知識庫の運営会社は株式会社和心で、両社は関連会社です。和心村自身の施設情報も、ほかの掲載施設と同じ調査方法で確認したとしています。
出典:株式会社和心村









